トリミング費用について考えてみた
「人間の美容師さんは、犬の美容師さんに比べると、対人間だから大変でしょう…。トリマーさんは犬だけが相手だもんね。」
これは私がトリマーになって何年かした時に実際に言われた言葉。
職業とは、それぞれその仕事に就いている人にしかわからない大変さがあって、決して比べたりしてはいけないと思った瞬間だった。
それを言われた時、きちんと言い返すことも出来ず思ったのはこんなこと。
(そうか、世間から見てトリマーのことをそんなふうに考えている人が多いのかな)。←呑気
なんであの時きちんと言い返せなかったんだろ。
飼われているワンちゃんたちは、飼い主さんありきの存在であり、一番は飼い主さんとのコミニケーションを大切にしないといけないのに。
何年か経ち、SNSの普及によって実は大変なお仕事なんだよね…という認識も広まっていき、経費の原価高騰もあってトリミング料金も値上げしていった。
しかし、まだまだ地方のトリミングサロンは10年前から値段は変わっていないところも多い。
日本で大流行中のトイプードルは、平均施術時間が2時間ほど、トリミング料金は6500円というお店もざらにある(地方へ行けば行くほど安い)。
6500円…これがいわゆる、「人間よりカット代高いよねー」
と言われる値段なのだけど。
今やトリマーの職業は、不人気の一途をたどっているらしい。
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危険 汚い 給料安い
因みに危険の内容から説明すると。
人畜共通感染症にかかる危険性と噛まれる事による怪我。
人畜共通感染症は、狂犬病(何十年と日本では発生していないが輸入されてきた犬の中には、狂犬病を持っている個体もいた)に始まり、パスツレラ症、ダニを媒介して感染する重症熱性血小板減少症候群、
レプトスピラ症、ノミによるアレルギー、皮膚糸状菌症、他にも様々な感染症がある。
汚い=下のお世話が多いについては、動物なのだから、これは仕方がないこと。
汚いという感覚よりも、どんな状態かを観察して飼い主さんに伝えることを大事に。
給料が安いに関しては、トリミングの料金が安いのだから、トリマーのお給料が高いはずがない。
その他でいうと、きちんとした知識を身に付けていなければならないこと。
全身をくまなく触り、2時間程(犬種による)長時間テーブルの上で立っていなければならずワンちゃんにとっては負担もかかることもあり、体調崩してしまうことも。
犬種によってかかりやすい病気だったり、それぞれのワンちゃんの持病を勉強して理解しておくことが大事。
デザイン性については、骨格や裸体を理解してその子に合うカットを考える=骨の構成などを理解する解剖学の知識も大事。
デザインの流行もあるので常にアップデートが必要。
そして、トリミング作業を嫌がるワンちゃんを何とかリラックスして受けてもらえるように、ハンドリングの技術も大事。
以上のような事柄は、自分の気持ちや時間に余裕がないとできることではないと悟り。
流れ作業では絶対にできない丁寧さ。
悩みに悩み抜き考慮した上で、私は去年の5月から思い切った値上げに踏み切った。
かなり厳しいご意見もあり、3割から4割ほどのお客様が減った。
しかし、毎日頭数に追われる時間がなくなり、気持ちに余裕が出た。
ワンちゃんをもっといろんな角度から見れるようになった。
ワンちゃんとのコミニケーションがもっと楽しくなった。
そして少し時間ができて、自分の技術を見直すこともできた。
結果的に本当に良かったと思えた。
今来ていただいているお客様には感謝しかない。
本当にありがとうございます。
動物愛護法も変わり生体販売の価格も高騰、戦争やコロナの影響で物価も上昇、動物を飼う人にとってはますます厳しい世の中に。
なるべく安く可愛いカットを希望する方にとってはとても大変な世の中になるだろう。
近い将来トイプードルのトリミング費用が、1頭1万円というのは当たり前になってくると思う。
今の現状、そうなっていないのがおかしいと思ってもいい。
「じゃぁ、高い店ばっかりで、私たちはどうしたらいいの?!飼うなとでも言いたいの??」
このような飼い主さんも増えてくるんだろうな。
その答えは…
そうです。
動物というのは、経済的にも時間的にもきちんと余裕があり、且つ相当の覚悟がないと飼ってはいけない存在なんですよ。
ましてや、日本で流行中のトイプードルやビションフリーゼは少なくとも、月一回のトリミングが必要で大変お金がかかる犬種なんですよ。
カットの技術も大事だけど、分かってもらうには伝える技術も大事よね、トリマーさんて。